| 富山県井口村のご出身で、金沢美術工芸大学で学ばれた陶芸作家藤井一範さん。藤井さんは「爆陶」(成形した土に火薬を仕込んでそれを爆発させ、それを乾燥させ焼き上げて作られた造形作品)で知られていますが、その藤井さんの個展が、8月26日から9月11日まで、金沢市民芸術村アート工房で開かれました。
今回展示されていたのは、5月に同所で公開制作されたものを含めて7点。「爆陶」の公開制作時の映像もビデオで流されていました。その爆陶の空間に入って感じたことは、「かっこいいなあ」でした。こんな漠然とした表現が正しいかは分かりません。でもきっと、芸術作品は、言葉では言い表せないものを形を持つことによって伝えようとするもので、見て感じる鑑賞者も、言葉では言い表せない感情を抱き、作品と対話するのだと思います。
爆陶と向き合ったとき、あの爆発の怖さやエネルギー含め、作品の表情や色合い、すべてを全身で感じ、その空間がとても、どきどきするものでした。爆発という破壊的な行動も、一つの形が生まれるきっかけとなり、そしてそれらが集まることでメッセージが生まれ、その、ピンとはりつめた緊張感が、かっこいいなあ、という一言を生み出したのでしょう。
爆発による変形は、もちろん計算されてもいるのでしょうが、やはり偶然による部分も大きいと思います。人間が作り出そうと意図した部分と、それを超えて人間の手の及ばない部分。それら必然と偶然の微妙なバランスが、このような強烈な印象を残させるのでしょうか。
今回のような素晴らしい作品に出会い、どきどきする感情が生まれることは、とても貴重な出会いであると感じています。人との出会いのように、作品との出会いも、人生の中で大きな意味を持つものでしょう。爆陶の作品との対話は、これからも忘れることなく、深く受け止めて過ごしていけたらと思っています。
(川北)
「爆陶」藤井一範展を終えて
藤井一範
「爆陶」とは、爆発によって出来る陶造形という意味である。爆発という自然の極致とも言える現象をとらえ、アートとして永久素材であるやきもので表現しているのである。また個展等の発表は、作家としての社会批判や空間認識を加え展示として作品化している。
私は陶造形の分野において、工芸と現代美術の間で、素材や技法を生かす必要性、焼く事の意味、空間構成、時代性などを念頭において制作発表してきた。しかし、一つの分野での表現は、時代の要望に対応しきれなくなってきていると感じている。様々な分野、素材、表現の人間とコラボレーションすることで、新しい創作が生まれるのだ。その意味でも、今回の個展で映像表現を加えることが出来たのは大きな意味があったと思う。
金沢の伝統工芸界も、異思考で異表現の人間が交わり、新しい表現が誕生したら、21世紀の金沢の現代美術工芸は面白くなるだろう。
21世紀美術館は金沢に異思考の異表現をもたらしてくれることだろう。それらとの交流によって、私の表現にも生かして行けたらと思っている。 |
|
なんだかとてもおもしろいレクチャーだと思いませんか?9月13日市民芸術村里山の家でリクリット・ティラヴァーニャさんのキッチンレクチャーが開催されました。まず受付を終えて縁側から中に入ると、おしぼりとお茶が配られ、すぐにお盆の上に山積みになった生春巻が回ってきました。(彼はこのために4時間前から用意してくれたそうです)
お話は今までのアートイベントのことをスライドと調理を交え進んでいきました。「日常にアートが絡み合っているのがいい。料理はコミュニケーションを図る方法の一つなんだよ。」と言われていた通り、確かに日常的な行動である料理を振る舞うということは、万国共通の一番手っ取り早いコミュニケーションの方法です。〈作った人の顔が見えると、料理は数倍おいしく感じられる!〉辛いものが苦手なのに生春巻とスパイスの利いたタイ風丼(かな?)がとてもおいしくて、ペロリとたいらげていました。
作家というのは自分の世界を大切にしていて、当然そこに他者が自由な意思で踏み込むことはできないと思っていました。それなのに彼は「料理を作っていて、あまりの忙しさに廻りの人たちが自然と手伝ってくれたんだよ。」と優しく笑っていました。〈あぁ、彼の作品はどこまでも、とてもとても懐が深いんだ!!〉そして彼はとってもチャーミング!“人柄のアーティスト”なのかもしれません。
ただ話を聞くだけでなく、そこに料理が一つ加り、五感がフルに動き出す。それだけで、そこにいるアーティスト・スタッフ・参加者が一つの空気に包まれたように感じられました。それって、ちょっと幸せなキモチでしょ?
そして彼はこの金沢を去る時に私たちに向けて次のメッセージを残してくれました。 「金沢21世紀美術館はあなたがたの家です。自分のスペースだと思って、自分の家を大切にするように、美術館も大事に手入れをして、大切にしてください。
あなたがたの友達や、近所の人を連れてくることができる場所、近所の人が集まり、自由に使える場所にするべきです。 嫌いになったら、燃やしてしまえばいい!というのは冗談ですが、あなたがたがしている色々なサポートやあなたがたの存在、そしてあなたがたが連れてくる人たちが、この美術館にとっても一つの特色なのです。
金沢21世紀美術館を、色々なことを学んだり、新たな人や興味と出会うことのできる場所、新しい体験のできる場所にしてください。」
リクリットさんありがとう、
そしていつかきっとあなたに再会できますよね。 (杉宮)
|