金沢21世紀美術館は「美術館は街であり、街は美術館である」という考えのもとに構想されてきました。美術館が特定の人々のためだけにあるのではなく、幅広く日常生活のなかに溶け込んだ施設であるためには、どういった試みが可能なのだろうか。
これは、そういった観点から開館1年前のこの時期に企画された国際シンポジウムです。

- Table of Contens -

第1部「美術館と都市」
第2部「多様化する美術館」


以下、ripple21メンバーより
海外の美術館の子供向けプロジェクトは、大人の私にも魅力的。
本物だけが持つ魅力に触れてもらいたい─。子供に、大人に、地域に、積極的に働きかける美術館の姿勢。
新しいものは、多くのハードルを越えて現れる。
理想の美術館 理想の街
美術館の広場でパーティーがしたい
美術館が街を変え、街が友の会を変え、友の会が美術館を変える


◆パネリスト◆

アルフレッド・パックマン
(ポンピドゥ・センター内国立近代美術館館長)

堺屋太一
(作家、元経済企画庁長官)

緒川たまき
(タレント)

蓑 豊
(金沢21世紀美術館(仮称)館長就任予定)

コーディネーター:
早川信夫
(NHK論説委員)

 

 

 

第1部では、音楽/図書館/産業と結びついた複合的な文化施設として注目されたフランスのポンピドゥ・センターのパックマン館長を招き、堺屋太一さん、緒川たまきさんと、来年度から館長に就任する予定の蓑豊が、お互いの意見を交わし合いました。さらに先駆的な例として、都市開発の面からも重要な役割を果たしたロンドンのテイト・モダンや、ポンピドゥ・センターの教育プログラム、アーティストのサポートに力を入れるニューヨークのPS1、そしてサブカルチャーや異文化を積極的にとり入れるパレ・ド・トウキョウ(パリ)の事例紹介がされました。これらのVTRでも、また交わされた議論のなかでも頻出していたのは、現代の複雑な社会を背景にしてうまれた同時代の美術を、どうやって多くの人に観賞してもらうかという点だったと思います。人々の交流、教育や解説をするスタッフの充実、そして気軽に立ち寄れるような施設として美術館が街に浸透していくための様々な工夫を具体的に語ってもらいました。

*なお、第1部の様子は以下の日時に放映予定です。
NHK「BSフォーラム」美術館が街を変える
平成16年2月7日(土)午後5:00?5:50(NHK BS1)
平成16年2月9日(月)午前10:00?10:50(NHK BS1)<再放送>

 


第2部ではやや現代美術をめぐる突っ込んだ話もでてきました。ラース・ニッティヴさんは、場所を持たずに移動する美術館という非常に興味深いプロジェクトを紹介しました。ニール・ベネズラさんは、自分の美術館の役割や実際の展示についての詳しい紹介をし、そして今回残念ながら来日できなかったハンス・ウルリッヒ・オブリストさんが代わりに送ってきたのは、急逝したセドリック・プライス本人に、グローバルな視点から最近注目されているラディカルな建築論についてインタビューしたビデオでした。それらの話を受けて金沢21世美術館の設計者である妹島和世さんと西沢立衛さん、学芸課長の長谷川祐子がこの美術館の機能や目指すものを語りました。近年の重要な社会的な変化と美術館が必ずしも無縁なものではなく、様々な価値感を受け入れていく感性を育てていく場所としての柔軟な美術館の在り方が示されていたのではないでしょうか。とくに吉見俊哉さんは、都市論を専門にされる立場から文化施設とダイナミックな政治や経済の変化について考えるきっかけを投げかけてくれたと思います。シンポジウム全体としては、議論を深められるようなテーマが多岐にわたり、じゅうぶん話をするための時間が足りないという感を拭えませんでした。しかし、はっきりとした結論がその場で語られなくても、それぞれの来場者の方々自身がなにかしらの関心事を見出すことができ、そのことについての意見をほかの方と語ったり、自分で調べたりするきっかけとなったなら、大変嬉しいことだと思っています。

 

 

◆パネリスト◆

ニール・ベネズラ
(サンフランシスコ近代美術館館長)

ラース・ニッティヴ
(ストックホルム国立近代美術館館長)

ハンス・ウルリヒ・オブリスト
(パリ市立美術館キュレーター *当日欠席)

妹島和世/西沢立衛
(建築家)

長谷川祐子
(金沢21世紀美術館建設事務局学芸課長)

コーディネーター:
吉見俊哉
(東京大学社会情報研究所教授)


「海外の美術館の子供向けプロジェクトは、大人の私にも魅力的。」

ポンピドゥーセンターには、子供専用のギャラリーや子供専用のアトリエがあるそうです。
そこには訓練を受けた教育専門のスタッフがいて例えば、袋の中に手を入れてその手触りで目の前の彫刻と同じ素材を探すというような授業をしているそうです。
確かに私が受けてきた美術教育は技術面ばかりを重視していて鑑賞する力、考えて作品を読み解く力などは鍛えられていなかったように思います。
美術とは上手に絵を描くことだと思っていたのですから。
そう考えると
この素材はなんだろう?この感触が近いかなぁ?などと目の前の作品をにらみつけながら袋の中をがさごそしている子どもたちの様子を思い浮かべるとこのことの方が子どもたちにとってどれほど広がりがあるだろうか!と思いました。

また、建物のシックハウスが原因で2年間の閉館に追いやられたストックホルム国立近代美術館は建物がないのなら遊牧民になろうと、収集作品をバスにのせて移動美術館として再生しました。
これによってミュージアムになかなか来られなかった北部の少女にも美術に触れる機会を与えることが出来たのです。
それから、第2部の後半で美術館を島にたとえていた話の中で、島とはお金のある人がお金で時間を買って来る所でもある。島での余暇や自由な時間といったものは一部のお金持ちのものだと考えることもできるのだ。と言われていた話を思い出すと美術館が動いて自分の町にやってくるというのは、美術館が一部の人たちのためのものではないということ、アミューズメント化して『ディズニーランド』になってはいけないということ、かといって『普通のもの』であってもいけないということ、そしてシリアスな場所でもあるからある程度の排他性を残すことも大事ではないかということ、あの場で話されていたこんな矛盾する多くの理想をちゃんとかなえているように思いました。
ストックホルム国立近代美術館における『新しい美術館』の方向性をみせてもらいとてもうらやましく思いました。

(中島)

本物だけが持つ魅力に触れてもらいたい─。
子供に、大人に、地域に、積極的に働きかける美術館の姿勢。

[ポンピドゥー・センターの試みとストックホルム巡回美術館]
パリのポンピドゥー・センターアルフレッド・バックマン氏の述べられていた子供たちへの取り組み方。
子供たちは将来の来館者として位置づけて、開放的なセンター(場所)を設置し専門のスタッフによるプログラム作りで美術館の作品に間近に親しみ、高校生には企画展示をさせたり、毎年若いアーティスに制作の為の場所提供をし、
アートゲストの為の複合施設を作られました。
親の世代を含めての地域コミニテイーとの輪を広げ、年代をこえて人々に利用してもらうための意図的活動としてセンターを開放している、というお話に日本で言えば、「美術館と図書館と児童館、専用ギャラリー付き」という感じで子供にとっても、親にしても望むべき環境を持った場所だと思いました。

ポンピドゥー・センターの試みとは対照的だったのがストックホルム国立近代美術館ラース・ニッティヴ氏のノマド(放浪する民)的美術館のお話でした。
館長着任早々、老朽化のため美術館は取り壊され、大型バスに収蔵品を積んでスウェーデン国内を巡回すること2年間、新美術館が建設されて、後もその時のプロジェクトの精神を持ち、「美術館とは建物ではない」と言われたことにどきっとしました。
巡回先は学校であり、地域コミニテイーの場所であったり、これほど身近に美術を目にし、触れ、本物が持っている魅力に接することがいかに大事なことかが解るような気がしました。
どちらも子供たちと地域、人と地域にどう接するか、今までの常識ではなく心と精神が求められているだと感じました。
(岡島)

新しいものは、多くのハードルを越えて現れる。

第2部で流されたインタビュービデオの中で、ディズニーランドなどのテーマパークの話があがりました。建築家セドリック・プライス氏の『顧客(特に子供達ですね(笑)のニーズを追求すると、設計者自身の「こうあれば」「あああれば」といった思いや、設計者が求めている事が、建築設計する時にどうしても限られてしまう。』なんていうお話は本当にそうだなと思いました。

顧客のニーズと設計者自身の思いの違いはどうしても避けられない現実。ちょっと我に帰って躊躇しますが、このフォーラムは時間を延長してもまだ話が尽きないといった所に、この世界に生きる意気込みを思いました。
(竹下)

 

 

理想の美術館 理想の街

「第1部 美術館と都市」では、近年、数多く生まれている、都市や生活との関わりにおいて先駆的な美術館が紹介されました。具体的には、1971年にニューヨークのロングアイランドに使われなくなった公立小学校の建物を再利用する形で設立されたPS1という名前を持つアートセンターが行っている「インターナショナル・スタジオ・プログラム」というアーティスト・イン・レジデンスでした。これは、毎年19名程度のアーティストにロングアイランドのPS1のアトリエ12室と、トライベッカのアトリエ7室を無料で貸し出すほか、これらのアーティストの作品を掲載したカタログを発行している。また、1986年以降、ハイスクールの生徒に展覧会を企画させるなど様々な美術教育プログラムも行っているというものでした。

子供たちを対象にしたプログラムとしては、パリのポンピドゥーセンターが、作品を前に素材で遊ぶプログラムや美術館の外へ見学に行くプログラムなど、美術館を授業に利用できるような各種のプログラムが用意されているそうです。

このように子供を対象とするプログラムが組まれている理由は、美術館は公のものであり、都市のインフラの一部として地域の振興に寄与するものでなければならないという意識の表れであると共に、美術館は子供を含めた市民にとって親しみがあり役に立つものであるということを理解してもらう必要があるということなのでしょう。

続いて、「第2部 多様化する美術館」。コーディネーターを務めたのは、東京大学社会情報研究所教授の吉見先生でした。吉見先生の呼びかけは以下の通りでした。

第2部では、近年起きている重要な社会的変化によって、どのように美術館が変わってきているかについて議論したいと思います。

20世紀は、コミュニケーションと移動のための技術が飛躍的に発達したグローバリズムの時代でした。そのことは、市場や軍事的な優位性を中心におく価値観を強化してきた側面を持つと同時に、インターネットや市民運動を通して、個人にとって身近な価値がグローバルな潮流に影響を与える可能性を大いに増加させたと言えるでしょう。こうした変化は、これからも様々な面で私たちの生活を変えていくと思われますが、美術館という存在とは果たしてどのように関わってくるのでしょうか。

このような変化の中では、もはや美術館の従来の枠組みは有効に機能しなくなってきています。美術館は市場経済の状況と密接に関わっており、その中でどのように活動するかが問われます。ボーダレス化によって特定の建物や場所を持たない美術館活動の可能性も生まれてくるでしょう。移動によって生ずる様々な文化や価値観の混交に対応するような、多様性を含み込む美術館の構想も必要になってくるかもしれません。

これからの美術館はどのようにあるべきか、どのような美術館が可能かということについて意見を交換していただきたいと考えています。

第2部は非常に難解で、自分にとっては正直いうと退屈な話でありました。このフォーラムを終えて、自分なりに現在どのような美術館が理想とされるのかと考えてみると、
 市民と現代美術の橋渡しをする場所
 街の誇りとなる雰囲気をもつ場所
 遊びに行きたいとおもうような楽しい場所
と、いうような気がしました。
(南)

美術館の広場でパーティーがしたい!

今回のカウントダウンフォーラムで紹介された美術館は「交流や出会い」を大切にされていました。
そして、そのために、いろいろな事を試みる美術館の活動が紹介されました。

美術館を中心として、人が集まるようにも思えますし、また、人の集まる所のひとつとして、美術館があるようにも思えます。

今回、私が一番素敵だなあと思ったのはNYのロングアイランドにあるPS1の野外パーティーです。
それは、夏の間、毎週土曜日に行われる「ウォームアップ」というパーティーで、市民やアーティストによる交流を目的とするものでした。
その様子をビデオで見る事が出来ました。
そこには、いろいろな人が集まり、普段の生活では出会えないような人と出会う事を楽しんでいる人々がいました。

金沢21世紀美術館の周りの広場でも、こんなパーティーがあったらいいのになぁ・・と、思いながら見ていました。
どんどん妄想が膨らんできて、たまに野外映画上映会や野外コンサートがあってもいいなぁ。と、かなりワクワクしました。
そんな出会いの場が金沢にもあったら、私は毎週通ってしまいそうです。

これから友の会が立ち上がり美術館がオープンしたら やりましょ?。パーティー!!
たくさんの出会いが、それぞれの人のもとで生まれると思います。
(藤井)

美術館が街を変え、街が友の会を変え、友の会が美術館を変える

「美術館が街を変える」
なんて素敵なタイトルなんだろう。
美術館が私たちの街をどう刺激的で魅力的な街に変えてくれるのだろう?
想像するだけで、ワクワクしてきます。
もう、この美術館の開館を街中みんなで祝いたい!
そんなことを思いながら、待ちに待ったこの日。
期待を膨らませながら、会場に到着しまいました。
ところが、会場を前にし、少しがっかりしてしました。
会場の前には案内の看板すら出ておらず、フォーラムをしていることすら気づかないような静けさ。
おそらく、このフォーラムが行なわれている事、美術館が1年後にできるって事を知っている人はごくごく限られた人で、街を歩いているほとんどの人が知らずに過ごしているのでしょう。
やはり美術館は馴染みの薄いものなのでしょうか?
がっかりした私を笑顔で迎え入れてくれたのは、ripple21のたすきをつけた友の会準備会のメンバーたちでした。
「やはり市民と美術館を繋げるのは、市民である私たちなのだ!」
私たちの活動を通じて、多くの人たちに美術館に興味を持ってもらえれば・・・。
私たち市民が積極的に参加することによりみんなが親しみをもてる美術館。
みんなが楽しめる美術館。
みんなが誇りに思える美術館。
そんな美術館に育てていけるのでは?
そう感じたので、今回の会報誌のタイトルを「友の会が美術館を変える!?」と名付けました。

「美術館が街を変え、街が友の会を変え、友の会が美術館を変える」
この3者の関係がうまくいけば、本当に何か変えられるのではないでしょうか?
(桶谷)


 

 

会報誌 第2号『友の会が美術館を変える!?』

こちらでは、10月18日のripple21の奮闘記や、妹島和代氏&西沢立衛氏、アルフレッド・パックマン氏のインタビューを掲載しています。フランクな雰囲気で、初めて知るエピソードも読めますよ!プレ会員でない方は、金沢の街のどこかで手に取ってみてください。
また、こちらでも見ることができます。
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